家庭の援助(扶養義務について)

生活保護相談室 QandA 扶養義務 画像

Q.ろくでなしの父親に苦しむ母親に生活保護は適用とならないのでしょうか?

5年以上前から父親が愛人をつくり、1年ほど前からは生活費もわずかしか母に渡さなくなっていました。

父親は以前にも別の愛人をつくりその際多額の借金を抱えて自己破産したにもかかわらず、性懲りもなく愛人をつくり同時に多額の借金を抱えているようです。

この状況のため、母に対して生活費をわずかしか渡さなくなり、今月の生活費は3万円でした。

父の給料の一部は差し押さえがかかっており、残りは自分が使い込んでいたようです。

母は父親との離婚は考えていないようです。このような状況での生活保護の申請はできるものなのでしょうか。

 

A.妻(あるいは妻子)だけ保護を適用するという事は通常考えられません。

夫が浪費家で家に金を入れないという理由で、妻(あるいは妻子)だけ保護を適用するということは通常考えられません。

例外的としては、夫婦関係は完全に壊れており、妻は正式に離婚したいのだが、夫の暴力などがあってどうしても離婚の手続きができない場合などがあります。

こういった緊迫した場合には、まず保護を適用して母子の生活安定を図った上で、離婚の調停等の手続きを進めていくことになります。

ただし、ご相談のケースのようにお母さまが離婚を希望していない状況では生活保護はもちろん、他の制度でも救うことはできません。

まずお母さまが現状から脱却する事が必要なのですが、ご自分で何とかしようとしない限り、役所は動くことができないのです。

 

(参考)

生活保護法

第十条 世帯単位の原則

保護は、世帯を単位としてその要否及び程度を定めるものとする。但し、これによりがたいときは、個人を単位として定めることができる。

 

Q母が入院中の場合、息子が生活保護を申請することはできますか?

主人の母は5年前に離婚し、別れた義父は生活保護を受けています。私たちとは別世帯でパート収入と年金で生計を立てていましたが、2ヵ月前に肝炎を患って

入院しております。退院のメドはたっていません。母のわずかな貯金で入院費を支払っておりますが底をつきそうです。

また、私たちにも支払い能力はありません。母は申請に行けない状態です。主人が代理で申請を行えるのでしょうか。

 

A.扶養義務者が申請を行う事も可能です。

申請はご主人が行うことも可能です。但し、通常はご主人からの相談を受けてケースワーカーが病院に赴き、お母さまの申請意思を確認した上で、

お母さま自身に申請をして頂くことになります。

ただし、お母さまが意識不明で申請できないようであれば、ご主人に申請して頂くことになるでしょう。

 

(参考)

申請保護の原則

第七条 保護は、要保護者、その扶養義務者又は、その他の同居の親族の申請に基づいて開始するもとする、但し、要保護者が急迫した状況に

あるときは、保護の申請がなくても、必要な保護を行うことができる。

Q家族の同意がなくても生活保護を受けることは可能でしょうか?

義理の妹が生活保護を受けようとしています。彼女は離婚後、子供二人と暮らしており、生命保険のセールスをして働いています。

彼女は仕事を辞めて自分は働かずに、生活保護をうけて暮らそうと考えています。健康で収入がある状況であるにも関わらずです。

今回、妹から電話があり、申請した区役所から書類(契約書?)が送られてくるので、署名捺印してほしいと言われました。義理の母は可哀そうとの思いで判をつくつもりですが、その書類はどのようなものですか?また、それを受け取らなかった場合、生活保護は受けられなくなるのでしょうか?

本当に困窮しているなら私たちも援助できるのですが、私たち家族の助言も聞かず、生活保護の制度を悪用するような事は私は承諾できません。

母子家庭のため生活は楽ではないけれど、現時点で市営団地に格安で入居し、保育園代も無償と聞いています。ここで生活保護を受けたりすると、本当に働かなくなるように思います。

また、家族の同意がなくても妹が勝手に生活保護を受けることは可能なのでしょうか?

 

A.家族が生活保護を受ける事をやめさせるのには、援助するしかありません。

送られてくる書類は「扶養照会」と呼ばれ、扶養ができるかどうか調査する為の書類です。法律上、扶養義務者は互いに扶養する義務がありますが、生活保護の申請を阻む権利はありません。ただひとつ、「金銭的な援助をする」ことを除いては。

例えば、過去に虐待を続けた父親が生活保護を申請して、その子供たちが扶養照会が送付され、「あんな奴に保護を受けさせるな」といっても、現実的に父親の生活が成り立たなければ、福祉事務所では生活保護が必要と判断することになり、子供たちの主張は退けられることになります。

ただし、質問に書かれたような申請者の生活歴については、福祉事務所でも「必要としている情報」のひとつです。

本人が今までどのような生活をしてきたか、家族との関係がどうだったかを知ることは、保護の要否に関係なく、対応を考えていく上で大きな助けになります。

できれば一度扶養届が送られてきた福祉事務所に連絡をとり、相談して頂ければと思います。

Q.扶養届に添付する「収入を証明する書類」がありません。

親の扶養届の件で扶養届が送られてきました。4月からフリーで仕事していますが、収入状況を明らかにするにはどの様にしたらいいのでしょうか。

給与明細や源泉徴収はありません。

 

A.税務課で課税証明の交付を受けてください。

お住まいになっている市町村の税務課で、前年度の課税証明(所得なしのときは、非課税証明)の交付を受けて同封するようにしてください。

あとは扶養届に終了状況などを記載して返送して頂ければ問題ないと思います。

 

Q.扶養届の内容は保護を受けているものにも、伝えられるのでしょうか?

父が三年前から生活保護を受けています。先日、扶養義務履行についての回答書が届きました。私は親と離れ一人暮らしをしていますが、三か月前から無職で

求職活動をしています。回答書には求職中で収入なしと書きましたが、その内容は父も知る事になるのでしょうか。

両親ともに心配性で精神的に弱くストレスの病気を抱えているので伏せておきたいのです。また、この書類は私が結婚しても送られてくるのでしょうか。

 

A.福祉事務所内で極秘文書として扱われるため、扶養義務者に見せることはありません。

保護を受けている人に扶養届を直接見せることはありません。ただ、「息子(娘)はどんな風に書いて返事を送ってきたのか」と聞かれれば、常識の範囲内で内容を伝える事があります。内容を伏せておきたいのであれば、扶養届にその旨を記載しておく、もっと確実なのは担当するケースワーカーに連絡をとり、その旨を伝えておくことです。

なお、福祉事務所は扶養義務者の生活に変化が生じれば、便宜上、扶養の状況を確認する必要があります。扶養届は「一度、記入して送付すれば終わり」といった書類ではありません。特に、結婚や就職など被扶養義務者の収入や生活に大きな変化がある時期には、福祉事務所は改めて扶養できるかどうかを確認します。

ただ、一般的に扶養届を送付するのは、保護の開始時や交流のない扶養義務者に扶養の可否を問う場合です。普段から交流があり、状況がつかめていれば、いきなり書類を送付するのではなく、電話により連絡をとるのが一般的です。

また、ケースワーカーや福祉事務所の方針にもよりますが、扶養照会の方法などは事前に連絡をとっておけば、相談に乗ってくれる場合もあります。(例えば、役所の封筒ではなく、白封筒・親展で書類を送付するなど)

 

Q.親からの援助を受けず、自分たちだけで生活したいのですが?

私は昨年、3人の子供を連れて離婚して、現在は自分の実家で両親と一緒に生活しています。今の収入は私のパート代(8万程度)と児童扶養手当、児童手当・養育費(5万円)です。

今は横浜に住んでいるのですが、離婚する前にいた長野県に引越したいと思っています。理由は実家で親に甘えている自分が嫌なのと、将来恋愛をするにも親の監視が面倒なためです。それに一番の理由は子供たちも長野の生活が楽しかったと言ってくれる事です。

ただ、このようなわがままな理由で、生活保護を受けて、引越費用や引越後の生活保護費用(落ち着いたら長野では正社員で働くつもりです。)などは出してもらえるのでしょうか?

 

A.扶養義務を求める事が優先されます。

生活保護には「補足性の原理」があります。保護を受ける為にはその能力、資産、その他あらゆるものを活用する必要があります。民法上の扶養義務者に援助を求めるのもこれに含まれます。つまり「親の援助を受けたくないから」という理由で生活保護を受けることは認められないということです。ご相談の内容から判断する限りでは保護の適用は難しいと思われます。

 

Q.居候している場合の取扱いはどうなりますか?

5歳と3ヵ月の2児を持つ母です。別れた旦那にしつこく付きまとわられ、逃げて来ました。現在、妹の家でお世話になっていますが、子供が小さい為、働くことはできないので、生活保護を受けたいのですが、どうでしょうか。

 

A.扶養義務を求める事が優先されます。

生活保護は世帯を単位として適用します。これを「世帯単位の法則」といいます。

今回のケースでいえば、妹さんと同居されている場合には、原則的には妹さんを含めて世帯認定がされます。その上で、世帯全体の年収と国が定める基準(最低生活費)を比較し、収入が基準を下回った場合に、その差額が支給されます。つまり妹さんに大きな収入や処分できる資産があれば、生活保護の適用は受けられないということです。

 

Q.別居している母親も援助しなければならないの?
5年程前から母親と別居しています(隣の市)。その母親が生活保護申請をすると言ってきました。現在市役所で手続き中だということです。

この場合、隣の市に住んでいる私に扶費の義務は生じないのでしょうか?大変身勝手な相談なのですか、小さい頃から母には恨み以外の感情はありませんので、母親と同居するなんて考えられないのです。過去の記事で「身内の援助はできないのか」ということが給付の基準になるとありました。私の年収は400万円弱で、家賃5万円のところに住んでいます。これは「援助できる」という判定になるのでしょうか?


A.強制ではありませんが、扶養することが求められます。
生活保譲では、扶養義務者の義務履行が前提となります。親兄弟であれば法律上は扶養義務は発生しています。問題は「どの程度扶費しなければならないのか」です。裁判の判例を参考に書いておきますので詳しくはそちらを見ていただくとして、大雑把にいえば、「自分の生活を壊さない範囲で、できるたけの援助をする」という考え方でいいと思います。
じゃあ具体的にはどうなの?という話になるかと思いますが、「自分の生活を壊ない範囲は個人によってかなり差があります。ただ、一般的に表えてどう考えてもおかしい、たとえば年収1000万円以上ある子どもが親に何らの援助もしないといった特異な状況を除けば、福祉事務所からあなたは月何万の援助をしなさい」といった具体的かつ強制力のある指導はされないでしょう。あとは、考え方次第です。
たた、援助といっても経済的なもの以外にも様々なものがあります。手続きを手伝ったり、同居しなくてもたびたび様子を見に行ったり、入院したときにはかけつけたり....こういった精神的援助が期待できる扶義義務者が受給者の近辺にいると、ずいぶんと違います。
個人的には金義的な援助は無理でも、精神的な支えになっていただければ、たいへんありがたいなと思います。もちろん、強制できるものではありませんが。
また、扶養義務履行の意思を確認するため、福祉事務所から扶義に関する照会文書が届くかもしれません。仮に援助ができない場合にもその理由をきちんと回答しておいてください。